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よりハッピーになる微笑み空間をつくりましょう♪20150410

  〜・〜「白樫のある画家の家」〜・〜

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 花吹雪の中、地域の小学校の入学式も終わり、
風に揺れるヤナギの新緑も柔らかい頃です。(*^o^*)


さて、前回は、
既にある地域の構造を保持し、より強化し新しく創造する、
生成された構造の生きているプロセスの実際例をご紹介し、
地域構造を修復し、より強化することで、
建築の生命もより生き生きとし、
既存の構造保存変換が、
生成された構造を導く生きているプロセスの鍵となること、
また、生きているプロセス自体が、
まだぼんやりとしているような既存の構造を保存し新しい構造を導き、
生成された構造となると、進めて参りました。

今回も、心にあるぼんやりとした既に在るセンターからですが、
構造保存変換としての建築の実際例から、家族背景や、
心の世界との関係、内的欲求へ比重が掛りますが、
建築法規や固定的では無い防火既定やメーカー製品体系や、
日々変化する経済情勢の中で、体調が不安定な高齢者と共に進める、
よくある一般的な初期条件から、
生きているプロセスから、センターを見出し、強め、全体性、
命が生まれていくプロセスを、ご紹介したいと思います。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・


「白樫のある画家の家」

10メートルはある白樫の樹が見守る閑静な住宅地。

近隣の相続を切っ掛けとした土地売買から
切られそうになった白樫を守るために、

元々の敷地の奥に位置する8畳ほどの広さの土地を買って、

ツリーハウスのような「離れ」付きの、

2棟建ての住宅を建てたいとの要望であった。

 

近隣のみならず、
散歩して建物写真を撮影することが趣味の施主、N氏の好みから、

当方へ、
施主の母との住まいの建築相談(
201125日)を持ちかけた意味が、

直ぐにわかった。

(施主、N氏が惜しむ近隣で取り壊されてしまう家。)

具体的に写真や現物の建物を指さして、道から見た建物全体から詳細に至るまで、

その見え方、景観を大切にしていることが解った。

中央線沿線の大正から昭和にかけての無理に権威を掲げていない和洋折衷で、

文化的な匂いを誇らしく感じて、愛着を持っていた。

それが、大量生産品で均質に変わる地域を嘆き、

ゆったりと豊かに茂る庭の樹木も伐採されるのを食い止めたいと強く願い、

そのメッセージを静かに伝えられる切っ掛けにとも考えられていた。

 

こうして自らの住まいを考えるに当たって、

道行く人からも感じられる「窓辺の佇まい」を最重要と考えて、

機能も含めて他の事は下位の次元との考えに行き着いたと、

環境構造センターのユーザー参加での設計・監理による、

入間市の学校法人盈進学園東野高校の
木製格子窓の最近の様子を書籍で見て、

当方へ企画からのリクエストであった。そして、重要事項を説明し

前の打合せで提出していた「JIA調査・企画業務委託契約書」で、

2011219日に契約しフォーマルにスタートした。

 

構造については、スケルトンとインフィルを分けて考えられるようにと、

木造でも内部空間の可変性を求められ、重量木骨造のSE工法で進めることも、

施主からの第一条件であった。

その数年前に、設計事務所としてSE工法の登録だけはしていたが、

その登録元請施工社による工事になるとの共通の認識を元に企画が固まり、

「JIA建築設計・監理業務委託契約書」へ、N氏から、

「著作権の共有」の追記だけを要求され、画家ならではの拘りと受け入れ、

2011314日に委託契約締結と成り、

プロジェクト・パターン・ランゲージの作成に進んだ。


(施主からの最初のリクエストとして、

木製格子桟付窓の20分の1の模型を作製した。

当初、施主より和風のやさしい引き戸の感じを求められた。

当初、外装は左官、メリハリをつけたコストバランスというパターンから、

内装は土佐和紙を選択して、模型にも貼った。

しかし、施主のお母様から、

和風過ぎるのでより洋風にするようにとのリクエストがあった。

この時から、共に妥協の難しい強い個性と出会っていた。

お母様は遠慮がちで全て息子に決めさせていったが、

毎回、施主のN氏が捺印した重要な手続きの後に、

彼女の嗜好や考えにより、施主に強く多大な影響を与えることとなり、

実際のところ、単独の決定権がない施主は、

確認申請など正式な手続きの直後に、当方へ、

少なくは無い変更を求める繰り返しとなった。)

 

<パタンランゲージ作成と土地条件の印象からエスキース・基本計画、基本設計へ>

                           


(第一印象からの最初のスケッチ。2011年2月5日)



(準防火地域での木製格子窓の実現を意識して、

「延焼の恐れのある範囲」を考慮し、

西側正面の建物配置や窓の位置や大きさを考えていたが、

施主から道の西北角から見えるファサードを高く、

1層半の高さにしたいとのリクエストあり。

そして、隣の建物ボリュームと

手前の建物をつなげる街並みを意識した。

更に、建物内部、間取りからの要求で、正面建物の配置は、

後退後の道路境界線により近くなった。)
(奥の離れから、白樫の幹を通して、道路側を見る。重量木骨造でも60cmの壁は必要。)

<施主、N氏のスケッチのために> そうして、施主の温めていたスケッチの実現を目指した。







 
(横浜の洋館やヴォーリズなどのN氏の好みの木製格子桟付窓。

近江や軽井沢で見学した懐かしさから、

当方も鑑賞していた2009年春から初夏のW.M.ヴォーリズ展覧会での作品集を見せて、
こんな感じへと上記の写真も見せてのリクエストであった。)

基本計画・基本設計を、杉並区役所建築指導課などとの事前相談で、

1敷地に、渡りベランダ廊下で2棟の構造がつながる1棟としての扱いで進めた。

施主には、登記との関係や建築面積制限の理解を重々説明し理解、納得をされて、

上記の2棟建てで、母屋と離れと其々の跳ね出しベランダがつながるような形態だが、

建築主事から、各跳ね出しベランダとの間に6mmの構造的に絶縁するスリット(隙間)を

設けることを条件とされた。それは、片方からの仕上げでカバーできる範囲であった。



(外側からの佇まいを、N氏はより重視していたので、

建築確認済の設計内容では、防火仕様としては、いずれにしても、

硝子の外側には格子は取り付けられず、火災時の硝子の歪みや膨張などの動きと

ガスケットで対応できない不十分な気密性で、酸素供給による広がる火炎の危険、

延焼の恐れを完全に解決できないことから、当初からN氏へ重々説明し、

木製格子桟建具は、防火サッシの外側で、外壁に設置する為、

建具の間にトレリスを設けて、植栽で面を揃える案であった。

また、通路から見上げた時、上に行く程、小さくなるグラデーションが

表れていた。3層目の内側は小屋裏収納で、「あの様に」と施主から近隣の建物を指さして、

パンカルーバーの小さな丸の換気口と小窓との指定であった。

(施主、N氏から提供の写真の一枚)


(2011年6月概算見積もり後の縮尺50分の1の模型。)
 

(実際には、この角度から建物全体を見れない。左側の1層半の建物ボリュームは、

西側の道に面するゲストルームで、出入り口は両開きで、道から見て、シンメトリー

に位置していた。)
 

( ゲストルームの屋内へ絵画を飾るとのことから、南側の開口部を両開きから、

親子ドアの幅に縮小し、更には、建築確認済設計内容の欄間付片開きドアに変えるようにと、

施主からのリクエストがあった。南面壁面の大きさと欄間付片開きドアの細長さの

不釣り合いさ解消のため、ダイヤ柄の外壁仕上げとした。)

 

(道路から見える西面と南面以外は道路から見える西面と南面以外は

防火サッシ。屋内で西面、正面の対面として

位置する東面の出窓だけ、

内格子付木製サッシ。20129月の模型。)


重要な建具についてだが、

建築確認申請前に、準防火地域で窓の外側と内側共に取り付けられる格子桟木製建具を

可能とする、二重サッシで考えていた。

外側からの見え方を重視して、内側を防火サッシとして、

外壁に木製建具を取り付ける考えで、実施設計図面をまとめて2社から見積もりをとり、

予算と釣り合うことから、建築確認申請をし、

2011年9月13日に確認済証受理となった。


上記に到る、基本計画から基本設計への流れの中の最初の現場実験の紹介。

内的欲求から、建築面積は殆ど許容建ぺい率に達している程であったが、

道から見た時に圧迫感が無いように、道に面する建物ボリュームや大窓の大きさが

重要なポイントであった。

そして、既存の建物を利用しての現場実験を行い、道路境界線からの距離だけではなく、

そのボリュームを道の曲がり角からどのように見えて、

白樫との高さ関係、正面のボリュームと、

広くはない道幅から歩いて目に入る建物正面としてのアングル、

そこからの奥に在る白樫の見え方、奥の白樫に向かっていく通路からの建物の見え方と、

その後の、最初の縮尺100分の1の模型に続き、

近隣を意識した最初の全体性をつかむための、縮尺50分の1の模型、

多くの屋内屋外のスケッチや、

建物外部と建物内部を結び付けて認識するための2番目の縮尺50分の1の模型、

それを基にした、近隣を生き生きさせて、施主家族の個性と合うように、

施主と一体化するようなデザインをと、

カラースタディーを実際の材料サンプルと並べて検討を進め、

施主と元請施工者(候補)で、確かめて、やはり共通の理解としていった。

 

 

<現場実験 2011430日>


 

<カラースタディ>

20129月下旬から10月上旬の最初のカラースタディは、
1987年築の江本ビルディング(本駒込メゾン・ド・ローラン)の時から少し進化させて、
縮尺50分の1の立面図上と、実施設計後の2番目の屋内屋外検討用の縮尺50分の1の模型を、
全体が見れて着せ替えのように可変性を持たせて、外壁材のサンプル色を意識して、利用した。


  

  

(無難であったが、施主が中途半端な無個性の埋没する色は、嫌だとの嗜好から、これは避けた。)

 

(近隣を明るくし馴染み、色出しも困難ではない下記の色で考えていた。)

  

 

 

(建築確認済後の構造の軽微な変更や建具仕様変更や見積調整で疲労感が漂う中、

ダイヤ柄の外観スケッチで、構造担当者や元請施工者候補の義務感だけではないやる気、

元気を維持することが出来た。)



 



(施主から、正面の窓の左右のみではなく、上下も均等にシンメトリーを

強調したいとのリクエストあり。全体性に貢献できるので、室内も検討し天井高さを抑えた。

しかし、重要な点として、平面的ではなく、

3次元として面を強調しコーナーが境界であることの意識から、

その存在を柄のつなぎ方で、南西角を境界として表した。)
  



 

確認済証受理後、よりスケルトンの傾向を強める為、2階の和室内の柱を最小限とした。
SE工法の構造設計担当者の「どうして?」との問い応じて、

海外留学生をゲストとして泊めるにあたって、

襖で仕切る伝統的な和室の在り方を体験させたい施主の考えと、

広々と見渡せる空間が欲しいと施主の願いを伝えた。

3層目には小屋裏収納が設けられるが、道側の西面外部の見せ方も重視して、

西側の和室は勾配屋根の大空間としたが、

小屋裏収納空間を支える内壁の梁の背が39cmとなり、中間の柱は外せなかったが、

他は外すことが出来たのは、元々、東日本大震災後で、

構造重視から施主の選択でもあったSE工法ならではだった。

 

 その後も木製格子桟付建具のスタディは続いた。

建築確認済内容は、当時の防火サッシの認定基準の見直しの影響を受けないように

考えていたところ、2重にしていたのを1重で考える為であった。

その間、それまで、

準防火地域で採用可能な防火サッシとして扱われていた「マーヴィン」や「もくまど」などが、

防火認定基準の自主的見直しから、受注中止としていた。

それでも、しばらくの期間は、現場ごとの個別認定で扱えるとの市場対応があった。

施主も、自ら情報を集めて「絶対にこれだ」と、山形の「夢まど」と出会い、防火認定も個別で

取っていたので、実施設計に取り入れて、

1期工事と2期工事に分けても本工事としてまとめ、

平成24年8月11日に元請工事契約を予定し、契約書内容も三者で確かめて臨んでいた。

 

しかしながら、その前日に、猛暑の中、

施主のお母様が心筋梗塞で倒れられ、工事契約は保留となった。

  

(木サッシ夢まどの現物サンプル、現寸模型と、詳細模型。)


 

その年の12月1日に、入院・手術・退院・リハビリ途中と、落ち着かれた

施主とお母様と、再開の打合せとなり、上記の施主の状況から資金繰りの変更が生じて、

減額案の要望があった。工事金額に応じていた設計料の減額も含んでいたが、

事情と施主の熱意と減額案の具体的な提案と理解もあり、

「軽微な変更」で済む範囲での設計変更となった。

 

 工事契約を保留とされた元請施工者であるE工務店を初め、

木製サッシ、「夢まど」の社長の温かい理解と支持のおかげで、減額案の実施設計をまとめ、

平成25年3月末の見積額も、

前年12月1日の減額案の目標予算近くに納まっていることを三者で確認して、

平成25年5月13日には、

杉並区役所建築指導課で12条5項の「軽微な変更」報告受理となった。

 

 その時こそ、保留となっていた元請工事契約をするタイミングであったが、

施主は「これからファイナンシャル・プランナーと長期的計画を立てて、

融資の相談を始めると同時に、解体後の母の移転先のケアハウス」を探すとの

話になった。当方も工務店も、施主に工事見積の有効期限について注意を促し、

デフレ脱却という工事単価上昇中の経済状況や、

増税前の駆け込み需要からの影響の懸念も話し、

元請工事契約前の状況について警告に近いものであった。

その時に、サッシなど分離発注できない

構造保証付きの元請工事契約の意味と、

照明器具やカーテンや洋バスや既存のトイレなど、施主支給と出来る範囲について、

説明し、理解を得ることが出来た。

心配顔の当方と元請施工者を前に、

「全体としては、それ程変わらないでしょう、その時、出来る範囲のことを

するまでだし」と、鷹揚な構えであった。


その間、施主の建具の世界への探訪は続き、

工場生産品を取り付けるだけでは嫌なので、アルミサッシに着色を施すことを

考えて、そのプロ職人とコンタクトを取り、当方もコストの影響をスタディしたが、

元請施工者が重視する住宅品質の防水や劣化などからメーカー保証に係わる部分なので、

サッシメーカーの保証期間後のセルフビルドとしての扱いを推奨した。

 

更に、当初は、和様式の良いところとして、静かな引き戸を願われていたが、

当確認済となっている専用住宅のためでも、施主の

事業主としての融資が受けられることとなった平成26年3月には、

道路境界線に影響しないところは両開き形式を求められた。

それと同時に、南側の開口部の垂直線を揃えるよう要望があった。
「昭和の懐かしい、公営住宅の感じで・・・」と、N氏。
故に、当初、近隣の建物から3層目の小窓や換気口を要望されて、

通路から見上げた時に圧迫感が無いように、1層目、2層目、3層目と

グラデーションを掛けて、各窓幅が、均一ではなく、

全体として、細長い三角のような構成を描いていたので、

ゲストルームに絵を飾るという当初の施主の要望から、細長い南側の出入り口と

壁面の不釣り合いをカバーする為にも
描いていた外壁仕上げのダイヤ柄の斜め線を無として、
水平線を描くこととした。


 

(木製格子建具と防火サッシの組合せ。南側3層の窓の垂直線を揃えるという

施主の希望から、斜め線ではなく、水平線の意匠に変えた。

防火シャッターが、窓周囲に奥行を与え、遠近共に全体性に貢献できる段階まで確かめた。)

防火サッシの状況が、現場ごとの個別認定で扱われる猶予期間も過ぎて、

両開きというだけではなく、
硝子の外側取付の格子付では、防火サッシの扱いとはならないので、

住宅用防火シャッターを外側に設ける必要あり、施主の依頼で、

木製内外格子桟付両開き建具と防火シャッターの組合せの詳細図を

八王子のK建具店の応援や金物メーカーへの確認もあり5月下旬に提出でき、

駆け込み需要も落ち着いて増税後の経済情勢に合わせて、

それでも、平成24年8月当時の金額をベースとして抑えるE工務店と各社の努力あり、

最終的として見積もりに進むこととなった。

   

 

 


 

平成26年10月24日に見積もり提示後、構造材などの値上がりから、

全体として9%程、平成25年3月の金額から増額となった。

その間、キッチンユニットの再確認などを通じて、施主が資金繰りを模索している

状況と伝わった。

 平成27年2月に遂にE工務店との元請工事契約予定、

3月彼岸過ぎに解体・地盤調査し

4月には着工予定であったが、

平成27年2月4日にE工務店から辞退の意思表示があった。

 

 施主側の意匠などへの要求の変化の度合いが大きく、

それまでの経緯から「引き渡し」まで漕ぎ着けるか不安を通り越して、

危険すぎて無理だとする会社の判断とのことだった。

それでも、共に3年間、実現のために忍耐強く対応してきて、その実現へのスタート直前で

棄権するのは、それまでの努力やエネルギーが勿体ないと訴え、

支払条件など工務店側が施主の移り変わる要求のために

納得したはずの遵法での問題解決を翻し、
法軽視を繰り返す施主の姿勢から、

被害を受けないように工事契約内容を確りと固定する旨と、

「省エネ住宅ポイント」算定報告書も見せて

時間経過からの製品価格の増額分の消化の方法示して、

最終見積もり調整を依頼した。

 

 

 次の日、施主から電話で

「工務店と勝手に進めるな・・ビル用サッシはどうか・・・一部、木製格子窓と防火シャッターの

組合せを道に面する部分だけとし、他は全て、防火サッシにして構わない」とのことで、

防火では両開きは無理、そして網入り硝子」というところも断念する様子から、

9%のアップ分の資金繰りが思う通りに進まない様子がわかった。

また、全てのサッシや建具の詳細図を当方から得たがっている意志が伝わったが、

防火認定の意味や、詳細部分でも構造に合わせて取り合いが肝要で

現場で処置をしても無理な取り合いがあり、その点が建物構造や耐久性など

大きな問題を生じる原因ことになると説明したが

施主自ら、その説明内容を職人へも確かめるほどであった。

が、その都度、方々から説明を受けても部分的な表層的な理解に留まり、

根本的なところで、施主の全てを理解できないといフラストレーションは続き、

長期間続く度重なり何度も繰り返す変更依頼が続くのであった。

施主は、これが10年間続いてもあきらめないと漏らすが、

当方も工務店も法律の価値や業務契約内容、経済的活動である点など、

一般的、基本的なところで大きなズレがあると、強く感じるに至った。

 
 

それでも、

設計図面やこれまでの内観スケッチでは、全体性や一体性について十分な施主の

理解が得られないことから、実際には見えない角度からのスケッチも加えて、

これまでの育ててきたセンター、建物全体性のために、スタディを続けて、

母屋1階の西から東へと流れるような空間のつながり、

流れから木製格子窓が生む一体感、

全体性は壊せないと伝えた。

逆に、2階は、屋内と屋外の境界空間形成、通路から見上げる感じから、

当初から花鉢入れ件手摺や物干しと不燃木材部分があるので、防火サッシでも

全体性に貢献できると伝えた。

 

 一方で、住宅用防火シャッターが建物の全体性に貢献できるように

外壁仕上げ材と共に意匠的スタディを進めた。

当初は、アイボリーかホワイトのシャッターとし、木製建具を

オーナメントのように青緑色で、明るく華やぐ感じであった。

施主に全体や建具周囲のスケッチで提示すると、

「キルフェ・ボン」という銀座の洋菓子店の建物に似ていると、

施主からその写真を送られたので、受け入れられたと感じた。

しばらくして、外壁材のスタディを重ねた後、

実際にその菓子店を見にいったが、

どうしても、N氏、施主自身と結びつかないと感じられた。

 

施主、N氏に合う色を模索中に、施主の代表作品の写真を見返したりする内に、

N氏から最初に見せられていた洗出しの黄土の外壁を思い出し、

また、街並みに組み込んで、白樫の深緑色と合い、

白樫のチャコールに近い焦げ茶色の幹や枝、防火サッシのブラックに合う、

茶系の外壁色に辿り付き、防火シャッターもブラックをすると、

建具の奥行が深くなり、ガリバリウム鋼板の屋根や板金水切りのラインと呼応し、

全体性に貢献できる部分となることを確かめられた。

また、面に水平・垂直のラインを描く構成から、屋内も詳細を詰めて

一体とすることが出来た。

自動生成された代替テキスト: ...日国−..『J巴り
マ→
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・嘱き工難塔
ト・Jfけ
ャ‘レ乙
嘱な曳
登一。一・・、ー〈
リd.1

 

(2階の南側を不燃木材の花鉢入れ兼手摺があることから防火サッシへ。
見積調整と同時に、ブラックの防火サッシと防火シャッターと、木製建具のバランス、溶け込みを図った。)


 

しかしながら、これまでと同様に、新たな要素や変化を含めて

設計し見積で予算との関係を確かめ、スケッチなどで詳細や色を確かめて、

センターを強めて全体性を得ることが出来きて、工事中も育てていく決意が

固まったところで、施主の破壊が行われた。

 

当初から当方への依頼の理由で、

当プロジェクトのセンター、核の一つでもあった、

「格子桟はあきらめて、防火認定があるから両開きの木サッシにしたい

絶対にこれだ」と、N氏

コストを下げるには、2階だけ木製格子窓と防火シャッターはあきらめれば

ほぼ釣り合うとみていたが。1階の防火シャッターは、

デザイン性のみではなく道から直ぐに入れるので

防犯やプライバシーの点でも、全体に貢献できるものになって、
防火サッシと格子付木製建具と防火シャッターがリンクしていた。
しかし、N氏の要望は、
盈進学園東野高校や本駒込メゾン・ド・ローランの、
均一ではなく個々の個性を大切にしてこそ強い関係性を持てる
有機的関係性を築く方向から、
全体的に対称性に拘って、上下も均一に揃えたいと、施主の考えは変わっていた。

 

ここで、クリスへ問いました。施主の要望、要求を取り入れて、

模型やスケッチで施主に確かめながら、デザインを進め、

「生まれてくる命、全体性を目の前にして、それを壊す」ことが繰り返される場合、

どうすればよいかと。

施主が単独で決められる立場なのか、背後に何かあるのか・・・。

当初から、
構造や防火や内外の一体性や取り合いや安全性など繰り返して説明し、

「解りました、それで進めて下さい」と理解され、納得されて、

正式に進んできたところが、全て振り出しに戻っての繰り返しに。

これでは、施工者も、引渡しの段になって「気に入らない」とされ、

気に入られるまで直され、不適格になるのが目に見える...との懸念。
住宅、建物は、道空間をつくり、まちをつくり、建物の安全性は社会的にも重要であり、
実際、建築の意義として、
構造や防火や断熱・防湿等の点から生命財産を守り、建築に根本的に貢献し、
限られた予算、条件内で最善を尽くし、
其の上で、美しい意匠も深く強く在り続けられると説くも、

「施主が責任持つと一筆書くから、

施主がいいというんだからいいんだ」と言われても、

その時になれば、材工単価が上がった結果を見た時のように、

「素人だから、そこまで解らなかった」とか、

様々な手法でシュミレーションをして「やっとわかった」との応答でも、
数か月後に同じ繰り返しが3年間も続くと、それがずっと続くであろうと、
元請施工者候補でなくとも、不安になってくるのだ。


 そして、元請工事契約前の打ち合わせ日程の調整中の段階で、
施主のお母様が骨折で入院し、手術後のリハビリ開始するところとの連絡があり、
それと重なるようにして、3年間支えてきた元請施工者候補が、
様々なストレスから持病が爆発して救急車で入院し、
1年間の療養後も完全復帰は難しい状況となり、
施主のN氏に「タイミング悪く、無理をせずとも・・・、
それでも、納得して捺印した建築確認済みと軽微な変更の報告をした設計内容で、
何が起きても保留としない決意で元請工事契約を結び、
その工事期間に完了するという強い気持ちがあるのなら、
SE工法登録他社と進めることができる」と伝えたが、
今度は「この両開き木サッシで進めたい、絶対これ」と、
全体性が生まれたところで、変えるのだった。
直営と同じ見積を自ら取って。
2年前にも構造保証付の元請工事契約条件を説明し理解されたはずであったが。
防火認定のある両開きでも、少しコストが下がるにしても、
木製格子桟窓は、当初からのセンター、核であった構造のはずで、
其のためのセンタリング・プロセスであったが・・・。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

 こうして、内的世界、内的欲求や社会的要因を含めて、

道との関係や白樫といった既にある構造、センターを生かして、

保存強化して創造していく過程をご紹介して参りました。

内的にも、ぼんやりとしたセンターを見出し、色々な歪みを修正し、

センターを健全にと強めていくプロセス、

センタリング・プロセスのご紹介でしたが、

土地条件以上に難しいことが何か、感じられましたでしょうか。
ここで、意図せずとも、この全体性を強める過程で、
「スケールの段階」や「交互の繰り返し」や「ポジティブ・スペース」や
「溶け込み」や「ローカル・シンメトリー」が、顕れてきています。

すくっと真っ直ぐに太くどっしりと存在する白樫のエネルギーに支えられて、

そうして、核心に迫っていく経緯、命が生まれるような、

生きているプロセスとして、捉えて頂けましたでしょうか。
すんなりとは生まれないケースでも、
この過程は、決して無駄ではなく、磨き練られ、
より強いセンター、構造に育っているはずです。

 

お疲れ様でした。

次回を、お楽しみに〜★☆★