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      よりハッピーになる微笑み空間をつくりましょう♪20180819

       −・−・既存の環境構造を磨いて強化する例・−・−

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  残暑お見舞い申し上げます。

 
 星空の下、宇宙の中で生きている地球と、その軸が極僅かに触れて異常気象となるのか、

同じように精一杯に、懸命に生命をつないできた祖先を思うお盆でした。

陽の光や風から秋の気配を感じてられて、廻る季節に安堵しております。

ご無沙汰しております。お元気ですか。

 さて、引き続き実際例として、
クリストファー・アレグザンダー著「The Nature of Order: 秩序の本質」から共に学んできた、
幾何学的性質を認知して、「既存の環境構造を生かして強化する」例を、
貴石を見出して磨くような減築を伴うプロセスに着目して、取り上げたいと思います。

 よくあることかもしれませんが、素晴らしい個性がぶつかり合って、
個々の趣味や、無理な作為から少し息苦しくなって、
全体性が弱くなったところで、どうしたものかという感じが、

形、空間から受ける感覚が、そのまま、構造にも表れていた例です。

 数年前に、東日本大地震の際、2階建ての住まいの、
ガレージ周囲の外壁や内壁、ガレージの天井に入ったクラックから、
耐震の問題があると、建築の勉強をし、
その資格試験も試みたことのあるインテリア・デザイナーのお嬢さんから、
耐震補強を含めた改修についての相談がありました。
途中、高齢なお父様の闘病や手術やリハビリの為か、お会いすることなく3年以上経た後、
再度、連絡があり、耐震化促進事業助成申請への手続きを勧めて、始まりました。

 都市農園が敷地の東に位置する住宅地域で、4メーター道路に面し、
白い吹付けタイルの洋風の勾配屋根の家だが、
同じ仕様の白い塀と合わせたのか鉄製円柱のガレージ屋根の水平線の、
モダンな感じとぶつかり合い、
クラシックな鎧戸やレンガタイルや、照明器具やドアやドアノブと、
一つ一つ愛着が感じられ大切にされているが、
そうした取付、備えつけられた物からも、
個々の強い個性を感じ、興味深く、独特な雰囲気を醸し出していた。

 

 元々、平面的建物形状がL字形の総2階であった。
比較的、バランスを考えられて確りとした構造で、
完了検査もあった住宅金融公庫住宅でした。
ところが、
食堂の換気扇開口が、筋違を無視して開けられて、
筋違も釘留めとしても効果のない取付られ方で、
それらと同様に、
築後まもなく、資格のある設計者なしで、
施主の要求から増築されたガレージが、
半端な鉄骨と木造との混構造で、長めの円柱の柱脚も不確かで、
木造の母屋に寄り掛り自立していない法不適合な状態のため、
様々な可能性をスタディし確かめた後、クラックの位置から
それらの主因となっている、
ガレージを解体撤去するのが、最適解と判明した。

 課題は、その後のポーチであった。
ここでも、法不適合を是正する減築後、
他の施主側からの要求と関連して、
許容建ぺい率や建築面積を遵守することもあったが、
やはり問題解決が次の問題を同様に生じさせないように、
構造的にも、環境構造的にも解決することであった。
故に、建築確認を要する増築扱いにならない
柱無しのポーチであり、
全体性に貢献できると考えられたのは、
構造的にも安全な、施工性もある、方杖つきのポーチの庇でした。





Watanabeポーチ庇詳細図X.pdf へのリンク
Watanabeポーチ詳細Y.pdf へのリンク

 ここまでは、15の幾何学的性質などは意識してはおらず、
ひたすら、洋画を嗜むうちに出展画家となる高齢のご主人や、
毎年個展を開く写真家のお母様と、ご両親に溺愛されている、
インテリア・デザイナーのお嬢様と一緒に、
止めどもない多くのご要望を鑑みた後で、
耐震診断後の補強設計をしながら、
センターを探す、核心を探す、センタリング・プロセスが、
この例の場合、ご都合や助成スケジュールから、
半年以上、断続的に続き、
当初の多くの要望から、予算を考えて現実的に、
耐震補強に関連した改修工事へと、優先順位を組んでいったところで、
既存の(内部・中間領域・外部と途切れの無い全ての)空間的、
環境構造を生かせる窓の配置を見出して、
更に、より強化する、より良くすることが、
耐震を考えた構造的にも合致するセンターが、
居間を中心として、現れてきました。

 

 まず、目をつぶって思い描きます。
 既存の空間構造を見ながら、
道から見て圧迫感を与えずに威厳も感じる建物のボリューム、
門から玄関までの距離は感じてもアプローチの健やかでフレンドリーな素直な感じ、
構造と空間が一致して感覚的に無理を感じず、疲れずに、
吹抜けで上下階をつなぐ垂直性のある空間、豊かな玄関ホールに入って、
小さなギャラリーでもある廊下から招かれるようにガラス框戸を開けて居間に入ります。

 居間に入ると、直ぐに右手、北のガレージ側の小さな縦長スライディング戸
そこから首を左に回して、
北面に続いて2
m強、道側である西面で3m強と、2面合わせて6m近く雁行した壁が続いて、
縦長スライディング窓の3倍以上の大きさの面格子付縦長ダブルハング窓があり、
その窓から道側の西面で
60cmで南西角に到り、そこから90cm程で南面中央の正方形に近い縦長の、
縦長ダブルハング戸の3倍以上ある鎧戸付きの出窓状の引違いサッシがあります。
そこから、南東へ
90cm進むと食堂に続くアーチ状のオープニングに到り、
食堂の南にテラス窓があります。

 ぐるっと、首を回して、「グラデーション、変化率」のある動きが、
外から入って、ガレージの様子を伺って、面格子や樹木や塀を通して道の方を伺えて、
そして庭を眺めて、テラス窓が南面に広がる食卓に着く感じ、
光も、玄関に入って丁度良い明るさ、廊下で少し暗めになって、明るいガラス戸を開けて入ると、
反時計回りで段々に明るさの度合いが増して、目も慣れて南の窓から庭の木々が見える。
心が花の様に開いていく感じです。そして、家族の食卓に着きます。

 鎧戸や面格子やレースのカーテンも、その骨格に貢献しますが、
窓そのもので、この空間構造を強めることと、耐震壁の増設がかみ合いました。
当初は、耐震補強のみ考えていましたが。

 ご要望として老主人の寝室にもなり得るような落ち着きもある、
含みのある居間の用いられ方から、
既存の鎧戸のある出窓状の引違いサッシ窓をより良くするために、

カーテン溜まりとなっていた、
出窓に成り得ない部分を幕を収める空間のように、
カーテン引き込み空間として、

居間の南面を左右対称「ローカル・シンメトリー」の耐震壁とするために、
正方形に近い縦長のサッシを中心として東側は既存壁を補強し、
西側は耐震壁を増設することでした。

カーテンを収めるスペースとすることが、
既存の出窓面板を生かして、

耐震面でも地震時の引き抜き力を抑える程度の耐力壁にするので、

貢献するものです。


着工前まで、カーテンが引き切れるかとか、
施工可能かなど疑問は出されましたが、
それらの為のスペースはあると考えました。
ロールスクリーンへの変更の提案もありましたが、
それだと、環境構造を弱めてしまいます。
小や中サイズの縦長窓はロールスクリーンでも、
食堂の南のテラス窓と居間の南側出窓はカーテンでつなげられる感じ、
「インターロック」、かみ合いとなり全体性に貢献できます。

少し縦長の正方形に近い窓のプロポーションは、
小ぶりな縦長窓から、面格子付の上げ下げ窓と
「変化率、グラデーション」を
成り立たせ全体性に貢献しており、
引いたカーテンがそれを損なうことなく収めて、
巻き上げたロールスクリーンで窓の美しいプロポーションや、
他の窓との変化率で支えあっている全体性を傷つけないことが重要です。

その結果、家全体の骨格、間取り、プロポーション自体、均整が取れて、
壁とのバランスや配置が、
内と外と合致しているセンターとして、
構造的に、幾何学的に、壁を強めることが、
窓の美しさをより引き出すこととなりました。

 この空間骨格を生かして、内装を導くようにして。
これからも、住まい手であり、
各々アーティストとしても造り込み、また住まいが作品となり、
個々の作品が、飾られる素地となるよう願い、祈っております。

 窓や壁は、内と外と合致しているセンターとして全体性に貢献しますが、
初めから、ローカル・シンメトリーを狙わなくとも、
居間の窓のある南面に耐震壁を増設し、
門から玄関を見るとポーチの方杖が勾配屋根形状と呼応し、
そうして、変化率を感じられる窓の配置と大きさと各々の壁の長さ、
内外の関係性を意識した心の動きと呼応する動線の関係、
心の変化を感じた時には癒される現象を味わうのでした。
合掌。


 


 平面的にL字型の建物形状から、
門から玄関、玄関ホールから廊下、廊下から居間、
居間から食堂と、
S字のような動線は、ガレージや道路に面する庭や、広めの南庭とかみ合って、
「地と図」となっています。

 計画中、理解を得るのに困難をともなった
ガレージ撤去から授かったご褒美のように感じられたのは、
レンガタイルが落ち着いた赤系色ですが、
青い空の下、陽光に輝いて、奥の樹木の緑や道路のグレイに囲まれて、
「地と図」の関係が、レンガタイルと灰白色の建物とほぼ一致して、
やはり「地と図」を強化して、
それらの色のコントラストで更に全体性を強めているということです。
切妻と寄棟の独特な屋根形状を損なうことなく、ポーチの方杖が応じています。
その
S字を描く動線に沿って、
玄関ドア、居間へのガラス框戸、
居間へ入ってすぐのガレージの様子を伺える小ぶりな縦開き窓、
道の様子を庭の樹木を通して伺える面格子付の縦長上げ下げ窓、
南庭に面する正方形に近い縦長の引き違い出窓、
そして、アーチの間仕切りを抜けて食堂のテラス窓が見えます。

 個々の窓の個性はくっきりと、目線や身の動きに沿って、
個々の窓の意味を強めて、壁の長さが、
小の窓から中、そして大きな窓へと、
長い壁から短い壁へとクレッシェンドする音楽の様に、
配置されて、内部空間、外部空間のセンターとなっています。

 それを強化することと耐震補強が一致するように考えて、
出窓のカーテンだまりとなっている、
カーテンを見るだけのガラス窓のない出窓部分を、
舞台の幕のようにカーテンを収めるスペースとして、
出窓の窓を縦長の正方形に近いプロポーションの窓を
グラデーションやローカル・シンメトリーで強調する、
増設された耐震壁の長さと呼応して、
クレッシェンドする、段々と増幅するような、
食堂側の逆から見れば、ディクレッシェンドだが、
それを顕かにすることで、環境構造としても強まって、
全体性が強まって、
内部空間と外部空間がインターロック、
大地と空の間で、インターロックしている安定感を得られました。合掌。

 

 どうぞ、次回をお楽しみに〜 (o)

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