メリー・ローズ 博物館

 

クリストファー・アレグザンダー  ゲーリー・ブラック  筒井実代子(武田実代子)

Oxford University Press 

199012月に、プリンス・オブ・ウェールズは、いくつかの建築一般上の問題の相談のために彼に会うように、私(C.アレグザンダ−)に依頼されました。その議論の間に、彼は、メリー・ローズ信託を惹きつけて、建設委託を確かなものにと望みと託したメリー・ローズ博物館の設計図面のセットを指し示しました。メリー・ローズ信託の総裁としての彼の立場で、殿下は、ヘンリー8世の偉大な船、メリー・ローズを収めることになっている博物館のために、まったく不適当であった粗野で、簡略化しすぎたグラスとスチールの箱を示した図面に深く失望していました。それは、またポーツマス海軍工廠で保たれている微妙な調和と著しく争っているものでありました。

 

彼は私に向いて、私が、助けに何かできないかと尋ねました。

私は、彼が必要であると考えたものを何でもする心構えがあると言いました。

彼とブライアン・ハンセンと私が、ガラスとスチールボックスの図面を一緒に調べていた時に続いていた議論の間に、彼は鉛筆を取り出し、ほんの2、3インチ幅の小さいスケッチを、図面の内の1枚の裏側に、「私達は、このようなのを、創ることができませんか」と言いながら、 大変速く描きました。

 

 プリンス・オブ・ウェールズのスケッチは、もとは、彼が望んだものを説明するための方法として、なされました。それは建物のインスピレーションでした。実際のデザインは、もちろん、メリー・ローズ信託との多くの議論と熟考、および機能面、構造面、および敷地計画要件の考慮の後に、多くの月数を経て、展開しました。しかしながら、デザインは、このスケッチのフィーリングとインスピレーションの枠組み内で、公式化されましたのでこの元のスケッチとその最終成果物と比較する時、明らかな類似性が認められるのです。

その時、チャールズ皇太子は、ポーツマス海軍工廠とメリー・ローズとは、親密であり、精通していましたので、スケッチをしたのでした。

p14

 



そのスケッチは、実際、その船とその場所のための「適切な」建築はどの様に見えるものか、極小さくも具現化したものでした。私達が設計した其の実際の建物の、この元のスケッチとの類似性は、彼が、メリー・ローズ信託の総裁であるからではなく、または、私達が彼にぴったりと従いたかったからではなく、私たちが設計した実際の建物が、そのスケッチ自体と同じ根本的な原則から、生成されたから起きたのだと信じます。両方の形態が、建築の真の意味と目的についての共有された感じから、およびメリー・ローズ博物館のために、ポーツマス海軍工廠内のその敷地上ということから、導かれるものの共有された感じから生まれて来ているのです。

 

そのスケッチは、シンプルで貴重な質を持っています。それは対称性を持っています。

それは、ひとつのセンター「として」感じられる明確なセンターを形成しています。

それは水平面的階層性を持っています。その形態は人の情緒を反映します。この基本形態の中に、少数の鉛筆ストロークにおいて、可能なアーチ構造の建物全体の感覚が、既にあります。

 

海側からの美術館の眺め:西面

従ってこのスケッチ、および私達の建物は 20世紀中間から現代のアーキテクチャーから、人間的情緒が最初に来る21世紀の新しい建築に向かって、引き離すために必要であるかもしれない方向を示してるのです。

プリンス・オブ・ウェールズのリクエストに従いながら、数日に渡る、より一層の議論の後に、私は、ポーツマスにあるその船を訪問し、メリー・ローズの主任考古学者であるマーガレット・ルール、および、他の評議員とのディスカッションのために、メリー・ローズ信託の他の役員に招待されました。その後、メアリーローズ信託が、環境構造センターに美術館をデザインするように正式に委任するのには、長い時間はかかりませんでした。

 

私達は約18ヶ月の間、断続的に働きました。しかしながら、私達の仕事が終えられる前の19927月に、博物館の運命にとり、重大な事態となりました。

 

P.15

 

元々は、中身は別で建築費用としての、500万ポンドを出資することになっていた船舶運送会社 が海軍工廠からその基金を引き出し撤退したのでした 。これは新しい博物館の建築を即、不可能にし、船の保存作業の間、臨時的措置によって、船を保護ために、様々な安価な代替案について検討することを、メリー・ローズ信託に促しました。これらの一時的な計画のほとんどは、整列350,000ポンドから2,000,000ポンドまでの建築資金を必要とするようです。

 

永久的な美術館のための資金が入手可能になるやいなや、永久的な美術館は、後日、この敷地に、メリー・ローズのために建てられます。この本で示している博物館は、一度に全部にしろ、段々に増やしていくにしろ、船の保存作業を妨げることなしに、 既存のテントを覆って、博物館を建設することが可能です。更に、最も肝要なことは、永久的博物館の第一段階は、118から122頁にかけて記述されていますが、約200万ポンドより多くなることなしに建てることが出来ます。従って、既存のテントを利用することで、それを解体する手間を軽減、または可能な限り省いて、30年経て痛んだ仮設建物から新しい博物館にするための寄付金を無駄使いすることはありません。この方法で、やはり、HMSヴィクトリーと不調和の、絶対に必要というより長く在ること許すべきではない現在のテントと、迅速に取り替えることが出来るのです。

 

以下に続いているものは、メリー・ローズのために私達がデザインした博物館の概略説明です。それは、主要な技術問題の分析、とりわけ、建築を可能にするために必要なコスト、エンジニアリング、および実際的な建設を可能とするのに必要な枠組上に集中しながら、最初のデザイン、および2番目のデザインを引き起こしたオリジナルなビジョンを含んでいます。

 

私達は、こうしたこの本にある題材が、世界中で、新しく、永久的な博物館の建築をサポートして、メリー・ローズの支持者を鼓舞することを望みます。それは、メアリーローズ信託とのデザインの発展を示しながら、この本自体が、将来の数年と数ヶ月に渡る更なるプロジェクトの展開において、役割を担うことを望んでいます。

 

メリー・ローズ博物館は、潜在的に、この10年でイギリスに建てられる最も重要な建物のうちの1棟です。私達は、その建物の重要性を、海軍工廠、ポーツマスの人々、および毎年、HMSヴィクトリーとメリー・ローズと観るために来る数千の訪問者を考慮して、少なく見積もってはならないと信じます。必要なもの 、海軍工廠と調和する、幾世代にもわたる博物館来訪者を鼓舞する真面目な建物です。

 

この建物の最も重要な事のひとつは、深い意味において、21世紀の、しかし千年来の伝統建築と一致している、新しい建築のビジョンを指し示しているということです。

それは、イギリスの人々だけではなく、世界中の人々にとって、とてつもない重要性を持っているビジョンです。何年もの間私の同僚と私が、このために苦闘してきた、このビジョンが、ヒューマン・ライフ、きちんとした社会、および私達の日常生活の普通の情緒や人間的経験への手掛かりとなるのです。(続く。)

p16

戻る